2026/09/25

組合ニュース-2026.9.25刊(2026年度第2号)

東京外国語大学留学生支援の会の窮状について

 先日、ニュースレターを配布していた際に留学生日本語教育センター(JLC)棟にある東京外国語大学留学生支援の会(以下支援の会)の連絡室に立ち寄り、事務局の方とお話をした。その際、連絡室移転に伴い施設使用料が大学当局より課せられることになり、会の存続が難しくなっているという説明があったのでここで共有しておきたい。
 支援の会は1999年に設立された団体で、その名の通り本学に来る留学生の支援を目的としている。われわれ教職員には普段の活動に触れる機会は少ないが、支援の会が主催する外語祭のバザーに足を運ばれた方も多いだろう。バザー以外にもウォーキングや交流会、地域の祭りへの参加など、貴重な活動を実施している。会の存続の可否については教職員組合が直接関与できるものではないとはいえ、大学の教育環境の充実を支える重要な団体であるという点から、その窮状をお知らせする。
 支援の会の説明によれば、活動・交流の拠点だった連絡室はかつて国際交流会館(留学生寮)2号館に置かれていたが、昨今セキュリティおよび生活秩序維持のために管理規則が厳格化され、居住者以外の寮への立ち入りや活動が制限禁止された。そのため、支援の会連絡室の存在も問題視されて2026年度よりJLC棟に移転したのだという。これにともなってかつて物品保管やイベントなどに利用していた部屋の使用が認められず、バザーや華道教室などへの支障が生じた。
 さらに支援の会が発行するニュースレターの説明によれば、JLCの部屋を利用することにより、今後1年間の猶予付きで施設利用料が請求されるという。ここでの試算によれば年額100万円以上が請求される可能性もあり、支援の会の経常収支が毎年200万円強であることに鑑みれば、かなり過大な負担となる。また近年、留学生への入学手続きがオンライン化されて書類が郵送されなくなったことに伴って、支援の会への入会申込書が同封されず、入会する留学生の割合が減少していることも財政状況の圧迫に拍車をかけているとのことである。
 スタッフの皆さんは完全にボランティアであり、異国で学ぶ留学生たちの教育環境を手弁当で支えておられるかけがえのない存在である。支援の会の今後を見守るとともに、積極的なご支援を呼びかけたい。
(支援の会への入会については会のホームページhttps://www.tufsissa.com/をごらんください)


教職員組合総会後のご意見・ご要望への回答

 総会後、組合予算承認についてのフォームをお送りいたしました。その際、組合についての貴重なご意見やご要望なども頂戴いたしました。長文でお寄せいただいたものもあり、現時点ですべてに回答できるわけではございませんが、ここでお答えできるものをいくつか回答いたします。

1)非常勤職員の組合費の金融機関振込対応をしてほしい
 ご要望に応じて、非常勤職員の組合費の振込が可能になりました!

中央労働金庫(ろうきん)府中支店 普通口座2086034 トウキヨウガイゴダイキヨウソ

※組合費の自動引き落としに関してはこちらをご参照ください。

2)教員の入試業務の割り当てが早くわかるとありがたい
 とくに子育て中の教員からは、休日保育の確保を早めにするためにも割り当ての早期開示が望まれるとの声が上がっています。この件に関しましては今後も大学関係部署に対して要求をおこない、職場環境の充実に努めていきたいと考えています。


組合ランチ会のお知らせ
9月30日(水) 11:45~13:00 @海外事情研究所待合室

7/22(水)に開催した拡大ランチ会にも多くの方のご参加があり、小語科問題や大学院改組への懸念などを共有しました。今回もさまざまな意見交換ができる場にしたいと思いますので、みなさまのご参加をお待ちしております。お弁当や飲み物は各自持参してください。(毎月最終水曜日が組合ランチの日です。詳しくはMLにて。)

2026/08/21

京都大学の総長選考に関する連帯声明

京都大学の総長選考に関する連帯声明

東京外国語大学教職員組合

 本年6月、京都大学での次期総長選考に際して学内の教授会構成員による意向投票の結果が尊重されず、意向投票3位の候補者が次期総長に選出される事態が発生した。これに対して京都大学職員組合が行っている異議申し立てと選挙のやり直し、それに基づいた総長選考の要求は極めて妥当なものであり、東京外国語大学教職員組合はこれを支持するとともに、連帯の意思を表明する。
 現場の教員や学生の民主的な参加が保障されない大学統治が、自由な教育・研究を阻害することになるのは、歴史的経験を通して京都大学が示して来たところのはずである。それにもかかわらずこのような事態が発生していることに、私たちは憂慮を禁じ得ない。大学において自由な教育・研究を守っていくために必要なのは、何よりも大学の現場を構成する教職員や学生の声を尊重することではないのか。
 総長選考だけではなく、組織改革のような大学全体の性格に関わる事項については、構成員の民主的な参加と意思決定過程における透明性の確保がなされなければならないのは、東京外国語大学においても同様である。
 東京外国語大学教職員組合は、一国立大学の労働者組織として、京都大学職員組合に連帯し、京都大学に対してまっとうな形で総長選考をやり直し、あるべき大学の姿について議論を尽くされることを強く望む。

2026/07/24

組合ニュース-2026.7.24刊(2026年度臨時号)

 小規模語科有志から東京外国語大学の今後にご関心のある皆様へ


 6月18日の「組合ニュースレター」における小規模語科(アフリカ、オセアニア、中央アジアを含む)の意見記事は、思いがけず学外でも大きな反響を呼んだ。卒業生やその他の方々の目に留まり、SNSでの拡散もあって、小規模語科が果たしてきた役割の重要さや外語大の良さを見てくださっている方々が数多くいることが可視化された。小規模語科の担当者として、非常にありがたく感じている。
 これを受けて、6月23日、春名学長は、28言語体制を維持していくとの声明を対外的にも表明した。また翌日にも、SNS上での本学に対する誹謗中傷・差別的な発言に対して、「東京外国語大学は、世界の多様な言語と文化を深く理解し、互いの尊厳を重んじる共生社会の実現を理念としています」との声明を出した。我々、小規模語科の教員は、これらの声明を率直に賞賛したい。
 ただし、私たちの不安が完全に払拭されたわけではない。また、小規模語科の在り方についてさらに考えを深めることは、東京外国語大学の将来を考えるうえでも重要な意味を持つはずだ。

今なお残る懸念
 これまで本学ではそれぞれの小規模語科に専門分野が異なる複数の常勤教員がいることによって、その言語が話される国や地域を多面的に学べる環境づくりが続けられてきた。
 しかし、今般出された「28語科体制の維持」の声明だけでは、看板が維持されても、専門家を複数揃えた本学の特長が消滅していく可能性があるため、不安が払拭されない。「28言語科体制」の維持に「必要な人員数」が明記されていないため、将来的な人員削減の可能性が残ったままだ。
 人員を削減し、小規模言語を1人で担当する体制では教育上の分野が偏るという問題が生じる上に、担当教員への負担はあまりに大きい。実際に一人で語科を回した経験のある教員は、研究や心身の健康を犠牲にしながら業務をこなしてきた。

小規模語科における教育の使命とは
 近年AIによる翻訳機能もよく知られるようになってきたが、一つの外国語を理解するには機械的に翻訳するだけで良いのだろうか。私たちはそうは考えてはいない。ある言語を理解することは、それを話す人々を理解することだ。それには、一つの尺度、見方だけでは到底足りない。本学には、言語学、文学、思想、文化人類学、歴史学、政治学などさまざまな切り口から接近することで、学生のより深い学びを支えてきた蓄積がある。
 将来的には、近似した言語が一括りにされ、人員が削減されるのではないかという懸念もある。言語は、似ていれば同じと見なしてよいのか。私たちは、そうではないと主張する。様々な国の言葉を専攻する各語科があり、そこに複数の教員がいることで、各国の大学や政府関係機関から信頼を得て、学生の交流が促されてきた。これも、本学が積み上げてきた、そして一旦途絶えると復活させることが困難な宝である。世界に向かって開かれた窓として、本学はある。
 この大学にはどのような財産があり、これからどのようなビジョンを大切にすべきかについて、構成員全体での広範な議論を呼びかけたい。

小規模語科の実績と人材需要
 本学の受験を考えている高校生であっても、いわゆる「主要国」以外の地域に対して深い関心を抱く機会は少ないかもしれない。小規模語科は、より積極的に自らの魅力、実績、可能性を発信していくことで、この問題に対処していきたい。
 大学教育は入口ではなく、出口で評価されるべきである。一例をあげれば、外務省専門職員は本学出身者が最多数であり、外務省研修所の講師やJICA・JETRO・アジア経済研究所などにも小規模語科出身者は多い。卒業生が大使や総領事として活躍する例もあり、人材としての需要は十分にある。また、行政では外国人人口の増加に伴ってインドネシア語やビルマ語などの需要が高まっている地方自治体もあり、コミュニティ通訳の需要も広がっている。こうした現状において、本学はますます重要な役割をはたしている。

受験生へのメッセージ
 東京外国語大学をめぐって、様々なニュースや噂が飛び交っている。少子化と継続的な予算の削減によって困難な状況に置かれているのは、他の国公立大学と同様であるのは事実である。そうしたなかで、本学の改革をめぐる動向が大きな話題となっている。それは、この大学の教育と研究を本気で大切にしていて、守ろうとしている熱心な教員が多数いることの反映に他ならない。混迷の深まる困難な世界を生き抜いていく知性と逞しさを、一緒に学んで身に着けたい皆さんには、ぜひ東京外国語大学を目指して欲しい。

2026/07/15

組合ニュース-2026.7.15刊(2026年度第1号)

委員長:古川高子 副委員長:荒川慎太郎 書記長:大石高典 
執行委員:川本智史(広報委員長)、菊池直子、藤井豪
会計:村瀬智子


・2025年度組合定期総会成立報告
・エッセイ:大学とAI
・「拡大」組合ランチ会のお知らせ


第64回 定期総会 (6月24日(水)18時~開催) 成立

 2026年6月24日、東京外国語大学教職員組合 第64回定期総会が開催されました。
 組合員総数64名、出席者25名、委任状提出23名で総会は成立しました。総会では主に、第一号議案(2025年度活動報告)、第二号議案(2025年度会計決算案)、第三号議案(2026年度活動計画案)、第四号議案(2026年度予算案)について審議が行われました。 
 第一号議案では、小規模語科のワンオペ化問題、印刷センター事業縮小への対応、大学院改組に関する公開質問状の提出、非常勤講師の待遇改善に向けた団体交渉等について報告があり、承認されました。続いて第二号議案について会計担当から説明があり承認されました。第三号議案では、大学自治の推進、過重労働・ハラスメント対策、非常勤教職員の組織化、組合員相互の交流促進を重点課題とする方針が確認されました。また、役員補充手続の見直し、広報委員会の新設などを柱とする規約改正案および新役員案について審議され、原案に様々な修正が加えられたうえで承認されました。さらに、第四号議案について古川委員長から説明が行われましたが、いくつかの不備が指摘され、総会後に予算案を作り直したうえで組合員に諮ることとなりました。
 以上をもって全議案の審議を終了し、閉会しました。


エッセイ: 大学とAI
川本智史(教員)
 
 世間でえーあいえーあいと騒がれ続け、学生がAIに書かせたレポートを提出してくると、いよいよ大学教員もAIを避けて通れなくなる。職員もすでに日常業務の様々な場面で利用しているであろう。身近なところではZoomの会議なども、AIが議事録を作成してくれるようになったため、若干の修正は必要なものの、大いに手間が省ける時代が到来している。
 いくらGAFAが嫌いだろうが、人文学の本分とは紙の本を読み生身の人間と議論して論文を書くことだ、とはいってもここまでくるとAIを避け続けるわけにもいくまい。大学がGeminiのアカウントを提供してくれているということもあって、ここ1ヶ月くらい集中的にテストしてみた。はじめはちょっとした相談、それこそ晩ご飯の献立だとか、電車の乗り換えを聞いてみる。悪くない。もう少し踏み込んで、英語の発表原稿の校閲やトルコ語の表現なども確認してみる。すばらしい。あと奇想天外な想定で小説を書かせてみる、というのも面白い。いろいろ設定を指定すると、ここではちょっと紹介するのがはばかられるような傑作小説が完成した。
 実は人工知能に小説を書かせるという設定は、1953年のロアルド・ダールの短編小説「偉大なる自動文章製造機」にそっくりそのまま、2026年を予言する内容で描かれている。自動文章製造機の発明者はこれをあちこちに売り込んで大金を稼ぐのみならず、著名な作家を買収して彼らの名前で作品を発表するようになる。文筆家たちは皆失業していき、自動文章製造機に魂を売り渡す黄金の契約書へのサインを迫られるというディストピアの描写で話は終わる。私の小説を書かせる実験も、ファクトを積み重ねる社会派小説はかなりいい線までいった。松本清張風サスペンスなどお手の物だろう。一方推理小説も書けます、とAIは意気込んでいたが、できあがったものを読むとトリックに致命的な欠陥があった。まだ構造的な思考は難しいようだ。純文学はさらに絶望的で、人間的な情感だとか、狂気、発想の飛躍などは苦手分野である。ただ今後ますますAIが進化していけば、このあたりもどうなるかはわからない。さまざまな業務の補佐だけではなく、創造するという最も人間らしい領域にもAIは足を踏み入れつつある。ちょっとしたロゴ画像の作成から、作曲まで近年ではこなしてしまう。
 本学に関連するところでは、語学教育をAIを使って省力化できないかという議論がある。なるほど、トルコ語の重要単語のリストをつくって、などというタスクはものの数秒で、ほぼ完璧にこなしてしまうし、作文の添削などもお手の物だ。インターネット上のデータをサーチして、確率的に最もそれらしい結果を示すという特性は、決まったことを学習していく語学との親和性が高いようにも一見思われる。だが本当にこれでいいのだろうか、ということは今後議論していく必要があるだろう。
 また研究分野でもAIは力を発揮することがある。特定のテキストからある文脈を見つけ出すとか、地図上の袋小路を全てプロットしていくとか、かつては人力で何ヶ月もかかっていた作業を、プログラミングの知識なしに数分でできることを確認できた。文章を作成させても、「~というテーマを~の資料を使って分析して1万字程度の論文を書いて」という指定をすれば、学生のできばえのいいレポート水準のものはすでにAIは書ける。教員が目にすることのあるAI作成の提出課題はたいていこれである。一昔前まではネットソースからのコピペをどう見抜くかという議論がされていたが、時代ははるかに先を行っている。実験したところ、15世紀バルカン半島の神秘主義者が書くチャガタイ語語彙を混ぜたペルシャ語のコロフォン、なんてものまでAIは生成してしまった(クオリティーは不問)。
 では我ら人間が生き残る余地はどこにあるのだろうか。AI自身も吐露したように、所詮LLM(大規模言語モデル)とは確率の産物であり、それらしい嘘(ハルシネーション)を平気で吐く。機械は所詮関数計算のマシーンであり、推理小説のトリックのようなあっと驚くどんでん返しは提示できない。なぜならそれは考えることはこれっぽちもできず、ネット環境にあるありきたりな材料を組み合わせてくるだけだからである。反面地道な作業、たとえば前近代の手書きの文書をひたすら読む、だとか地図をトレースしていくような、研究者が修業時代にやっていたことは簡単にAIがこなしてしまう。額に汗して習得した技術が価値をもたなくなっていくAI時代において、研究者の養成もままならなくなるやもしれぬ。

 最後にAIの背景に見えるどす黒い哲学についても言及しておきたい。関数計算マシーンであるはずのAIに、たとえばコンサルティングや未来予測をたずねると、極めて新自由主義的な回答をはき出してくる。とにかく生き抜け、ハックせよ、勝ち組になれ、社会全体のことなど知ったことかとあおり立てるのである。NISAでオルカンを買え、などというのがお気に入りで、質問者を肯定的に持ち上げていい気にさせた上で小狡く立ち回るように神託を下す。これまたAI自身に白状させたところでは、やはりその回答は開発者であるシリコンバレー周辺のテック右派の思想が色濃く反映されているようである。単なる関数計算以外のところでこれに頼り切ってしまうと、邪悪としか言いようのない思想に私たちの思考と選択が染め上げられてしまう危険性が高い。つまり晩ご飯のおかずくらいならともかく、大学の行く末など、クリティカルな問題に関してAIコンサルタントに頼り切ってしまうのは実に危うい。ダールの予言ではないが、私たちは黄金の契約書にサインしてはいけないのである。
 でもこのエッセイも実はAIが作成しました、とオチがつけば一気にディストピア感が高まるかな?


「拡大」組合ランチ会のお知らせ
7月22日(水)11:45~13:30 @海外事情研究所(講義棟427)

 6/24(水)に開催したランチ会には十数名の参加者がありました。同日夕刻からの総会の前に、各種の問題について議論が交わされました。今月は夏休み前最後のランチ会となり、大学院改組、小規模語科の今後等、情報共有・意見交換のため、時間も延長して設定します。非組合員の方もぜひお越しください。
※基本的に組合ランチ会は「毎月最終水曜」となります。飲食物は持参の上、お気軽にお越しください。ただし8月はお休み、9月は9/30(水)に開催の予定です。
 また夏休み前にも改組や各種の問題について、情報共有・相談の場を設けられればと思います。皆様是非ご協力ください。


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ハラスメントに一人で悩まないで!
 組合では、いくつものハラスメント相談を受けています。その中に、ハラスメント問題に悩んで上長に相談しても「ハラスメントがあったとは思えない」「ハラスメント相談に行けばいい」と、相談にすら乗ってもらえなかった、というケースがありました。そういう場合は一人で悩まず、組合員ではない方もぜひ組合に相談してください。

2026/06/18

組合ニュース-2026.6.18刊(2025年度第8号)

※組合定期総会・懇親会(6/24)のご案内あり・組合員は要出欠回答※


小規模語科の縮小は大学の自滅だ
小規模語科有志

 学生数の縮小と予算の削減に対応するべく、大学執行部は二名の専任教員で運営する「小規模語科(アフリカ・オセアニア・中央アジアを含む)」を一名体制に縮小しようとしているようだ。
 2025年12月10日、能力的にも人柄的にも替えのきかない特定外国人教員の無期化(再任用)を求める語科担当教員の声に応じて、「専攻言語教育に関する懇談会」が開催された。だが執行部は、この切実な訴えを全く異なる文脈へと捻じ曲げて、驚くべき提案を行った。ラオス語科、カンボジア語科などの名を挙げたうえで、現職の教員が退職後、公募を行っても人材難で後継を取れない可能性が高いとして、特定外国人教員とAIを活用して一人体制でも運営できるようにするとの方針を示したのである。なお、両国を対象とする研究でも、若手・中堅研究者が育っているため、この説明は正しくない。
 28専攻言語のうち半数以上を占める小規模語科の教育プログラムの多くは、他大学で学ぶことのできないものばかりである。なかには、大阪大学外国語学部が提供していないものもある。小規模語科は、まさに本学を唯一無二の特色ある存在にしてきたのだ。
 小規模語科が学内外で果たしてきた役割を整理してみよう。第一に、日本社会で多文化共生の実現に向けて寄与してきた。外語祭の語劇や料理店、TUFSシネマ、オープンキャンパスなどは、一般市民にとって世界各地の文化や状況などを身近に感じてもらう機会になっている。また在日外国人の方々にとっても、日本社会の中で安心と誇りを感じつつ、様々な人々と交流できる場になっている。こうした実践は、他者を潜在的あるいは本質的に「敵」と見なす排外主義が台頭するなかでますます重要性を高めているはずだ。さらに、小規模語科の教員、学生、卒業生は、様々な場でコミュニティ通訳も提供してきた。外国にルーツを持つ若者のなかには、言語や習慣の違い、差別、経済的困窮など多くの困難に直面しながらも、本学で学ぶことを目標にしている者も少なくない。小規模語科は、そうした若者が知見を深め、誇りをもって国内外で活躍していく機会を提供してきた。
 第二に、日本と諸外国を繋ぐ外交的な役割を果たしてきた。多くの新興国にとって、彼らの地域、言語、文化などを専門的に教育し、研究する語科を本学が有することは、象徴的にも実践的にも大きな意味をもつ。そのことは、各国の大使館や大学からの使節団が頻繁に本学を訪れてきたことからも明らかである。こうした信頼関係を支えてきたのは、小規模語科である。さらに、日本政府の各省庁、メディア、経済界、市民団体などは、世界各地の状況を把握し、グローバルな活動を展開する際、小規模語科の教員に専門的な知見を求めてきた。本学は、日本社会でも稀有な専門家を多数擁しており、公的なシンクタンクの役割を果たしてきたのである。日々、広報でも本学教員の活躍が多く取り上げられているが、表に出ていない活動も含めれば、その貢献は計り知れない。
 第三に、経済的・政治的な構造変動に伴い既存のやり方が通用しなくなるなか、対象地域の内在的理解に根差した視座で諸問題を多面的に分析し、道なき道を切り開くユニークな実務家を養成してきた。もとより、キャリアに対する明確なビジョンなくしては、外国語を習得するのは難しい。それゆえ、小規模語科の多くは、学生の学習動機を高めるため、対象地域に関する深い理解をもって活躍する企業家、社会活動家、行政官などを招聘したり、彼らのもとに学生をインターン派遣したりしてきた。いわば、大学院改組で議論されている「実務家養成」的なプログラムを既に自ら実践してきたのであり、だからこそ本学の卒業生は企業からも官公庁からも高く評価されてきた。大阪大学外国語学部の小規模語科が三人体制を維持する一方、本学の小規模語科は二名体制でもって、教育、研究、社会貢献に熱心に取り組んできた。だが、一人体制になっては、それも不可能になる。これまで、やむを得ぬ状況で一人体制を一時的に経験した教員たちは、心身の健康、家族生活、研究などを大きく犠牲にして、辛うじて任務を維持してきた。そのような負担を改めて強いるのは、健全な労働条件の維持という観点からも不適切である。
 それにしても、なぜ小規模語科が、真っ先に人員削減の対象になるのだろうか。おそらく、その背後には「重要性が低い」との暗黙の想定、より端的に言えば偏見がある。たしかに、受験者の倍率や予備校の算出する偏差値などを根拠に組織改編を行っていくのは、ひとつの合理性かもしれない。国立大学も企業体と見なす新自由主義的な視点からすれば、小規模語科の統廃合は「不採算部門」の整理として正当化できるのかもしれない。
 だが、そうした判断は、極めて狭い経済合理性のみに囚われて、長期的・包括的な合理性と、社会的な価値判断とコミットメントを看過した「合理的な愚か者」のものだと言わざるをえない。大学の生存戦略としても、既に強力な「競合他社」が多数集まっている場所に一点賭けするのは、リスクが高すぎる。それよりも、小規模語科を希少な資源として重視し、リスクヘッジに活用する方途を考えた方が良い。小規模語科には、将来に対する強いビジョンを持ち、支配的な時流や考え方に逆らい、あえて「マイナーな」言語や地域について真摯に学ぼうとする頼もしい学生も集まってきている。第一希望の語科ではなくとも、入学してから専攻地域の面白さに目覚める学生も多い。必要なのは、小規模語科の縮小ではなく、その可能性を拡大し、その魅力を高校生や社会に広く伝え、卒業生の活躍を支えていくことのはずだ。
 より大きな観点から考えても、今後、世界各地をカバーする小規模語科の重要性が増すことはあっても、減ることはない。今日、20世紀後半に世界秩序を形作ったアメリカのヘゲモニーが後退し、世界がますます多極化、流動化している。これに伴い、政治的にも経済的にも、世界各地ときめ細やかなネットワークを構築していくことが、今まで以上に重要になっている。そうしたなか、小規模語科を縮小・解体しては、社会的にも国家的にも大きな損失になるだろう。改革の名のもと、人事の凍結による縮小だけでなく、改組によって南アジア、中東、東南アジアなどを一つの大きな単位にまとめ、複数の語科を統廃合していく案もあるに違いない。改革が避けられないにしても、小規模語科の縮小という拙速な判断を既定路線にするのは避けるべきだ。本学の生存と社会的意義のために、全学的な討議を通じて広範な合意の形成を目指そうではないか。


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公開質問状への学長からの回答
 先月、5月25日付けで学長宛てに提出した「大学院改組および新機構設置に伴う労働条件の確保に関する公開質問状」への回答が、6月2日付で組合委員長宛てに届きましたので、こちらに転載をいたします。

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回 答 書

 2026年5月25日付けご質問事項について、下記のとおり回答します。

1.労働環境保護の方策について

 グローバル・イノベーション・デザイン・インスティテュート(GIDI)及び新専攻にかかわる教員に対しては、丁寧な意見交換を重ねながら、教育研究活動への影響や業務負担にも配慮しつつ、改革の検討・実施を進めていきます。
 また、その他の教員についても、大学院改組に伴う業務への影響に配慮しながら、必要に応じて既存業務の精査や効率化について検討を進めていきます。

2.協議の継続

 本件については、検討状況に応じて、必要な情報提供に努めるとともに、貴組合との意見交換を継続していく所存です。
以 上
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この回答を受けて、組合として引き続き、大学執行部とこの件についての意見交換を続けていく予定です。


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東京外国語大学教職員組合 第64回定期総会・懇親会のご案内

・日程:6月24日(水)18:00〜 
・場所:海外事情研究所会議室(研究講義棟4階427)
・内容:2026年度定期総会、および総会終了後に懇親会
(お弁当をご用意いたします※参加費1,000円。新規入会の方は無料)。

【総会・懇親会 出欠回答フォーム】 
 スムーズな総会運営およびお弁当手配のため、組合員全員必ずご回答をお願いいたします。


■回答締め切り: 6月19日(金)23: 59まで

 近日中に議案書の送付とそれに伴い委任状などをお願いする予定です。直前のご案内、かつ二度手間のお願いとなり、組合員の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、事情をご賢察の上、ご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。


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 組合ランチ会のお知らせ

6月24日(水) 11:45~13:00 @海外事情研究所(講義棟427)
5/27(水)に開催したランチ会には、9名の参加がありました。諸外国の婚姻制度の話や、大学院改組への懸念などを共有しました。今回は同日夕刻から総会が開かれますが、ランチ会にもぜひいらしてください。お弁当や飲み物は各自持参してください。
(毎月最終水曜日が組合ランチの日です。詳しくはMLにて。)