2026/06/18

組合ニュース-2026.6.18刊(2025年度第8号)

※組合定期総会・懇親会(6/24)のご案内あり・組合員は要出欠回答※


小規模語科の縮小は大学の自滅だ
小規模語科有志

 学生数の縮小と予算の削減に対応するべく、大学執行部は二名の専任教員で運営する「小規模語科(アフリカ・オセアニア・中央アジアを含む)」を一名体制に縮小しようとしているようだ。
 2025年12月10日、能力的にも人柄的にも替えのきかない特定外国人教員の無期化(再任用)を求める語科担当教員の声に応じて、「専攻言語教育に関する懇談会」が開催された。だが執行部は、この切実な訴えを全く異なる文脈へと捻じ曲げて、驚くべき提案を行った。ラオス語科、カンボジア語科などの名を挙げたうえで、現職の教員が退職後、公募を行っても人材難で後継を取れない可能性が高いとして、特定外国人教員とAIを活用して一人体制でも運営できるようにするとの方針を示したのである。なお、両国を対象とする研究でも、若手・中堅研究者が育っているため、この説明は正しくない。
 28専攻言語のうち半数以上を占める小規模語科の教育プログラムの多くは、他大学で学ぶことのできないものばかりである。なかには、大阪大学外国語学部が提供していないものもある。小規模語科は、まさに本学を唯一無二の特色ある存在にしてきたのだ。
 小規模語科が学内外で果たしてきた役割を整理してみよう。第一に、日本社会で多文化共生の実現に向けて寄与してきた。外語祭の語劇や料理店、TUFSシネマ、オープンキャンパスなどは、一般市民にとって世界各地の文化や状況などを身近に感じてもらう機会になっている。また在日外国人の方々にとっても、日本社会の中で安心と誇りを感じつつ、様々な人々と交流できる場になっている。こうした実践は、他者を潜在的あるいは本質的に「敵」と見なす排外主義が台頭するなかでますます重要性を高めているはずだ。さらに、小規模語科の教員、学生、卒業生は、様々な場でコミュニティ通訳も提供してきた。外国にルーツを持つ若者のなかには、言語や習慣の違い、差別、経済的困窮など多くの困難に直面しながらも、本学で学ぶことを目標にしている者も少なくない。小規模語科は、そうした若者が知見を深め、誇りをもって国内外で活躍していく機会を提供してきた。
 第二に、日本と諸外国を繋ぐ外交的な役割を果たしてきた。多くの新興国にとって、彼らの地域、言語、文化などを専門的に教育し、研究する語科を本学が有することは、象徴的にも実践的にも大きな意味をもつ。そのことは、各国の大使館や大学からの使節団が頻繁に本学を訪れてきたことからも明らかである。こうした信頼関係を支えてきたのは、小規模語科である。さらに、日本政府の各省庁、メディア、経済界、市民団体などは、世界各地の状況を把握し、グローバルな活動を展開する際、小規模語科の教員に専門的な知見を求めてきた。本学は、日本社会でも稀有な専門家を多数擁しており、公的なシンクタンクの役割を果たしてきたのである。日々、広報でも本学教員の活躍が多く取り上げられているが、表に出ていない活動も含めれば、その貢献は計り知れない。
 第三に、経済的・政治的な構造変動に伴い既存のやり方が通用しなくなるなか、対象地域の内在的理解に根差した視座で諸問題を多面的に分析し、道なき道を切り開くユニークな実務家を養成してきた。もとより、キャリアに対する明確なビジョンなくしては、外国語を習得するのは難しい。それゆえ、小規模語科の多くは、学生の学習動機を高めるため、対象地域に関する深い理解をもって活躍する企業家、社会活動家、行政官などを招聘したり、彼らのもとに学生をインターン派遣したりしてきた。いわば、大学院改組で議論されている「実務家養成」的なプログラムを既に自ら実践してきたのであり、だからこそ本学の卒業生は企業からも官公庁からも高く評価されてきた。大阪大学外国語学部の小規模語科が三人体制を維持する一方、本学の小規模語科は二名体制でもって、教育、研究、社会貢献に熱心に取り組んできた。だが、一人体制になっては、それも不可能になる。これまで、やむを得ぬ状況で一人体制を一時的に経験した教員たちは、心身の健康、家族生活、研究などを大きく犠牲にして、辛うじて任務を維持してきた。そのような負担を改めて強いるのは、健全な労働条件の維持という観点からも不適切である。
 それにしても、なぜ小規模語科が、真っ先に人員削減の対象になるのだろうか。おそらく、その背後には「重要性が低い」との暗黙の想定、より端的に言えば偏見がある。たしかに、受験者の倍率や予備校の算出する偏差値などを根拠に組織改編を行っていくのは、ひとつの合理性かもしれない。国立大学も企業体と見なす新自由主義的な視点からすれば、小規模語科の統廃合は「不採算部門」の整理として正当化できるのかもしれない。
 だが、そうした判断は、極めて狭い経済合理性のみに囚われて、長期的・包括的な合理性と、社会的な価値判断とコミットメントを看過した「合理的な愚か者」のものだと言わざるをえない。大学の生存戦略としても、既に強力な「競合他社」が多数集まっている場所に一点賭けするのは、リスクが高すぎる。それよりも、小規模語科を希少な資源として重視し、リスクヘッジに活用する方途を考えた方が良い。小規模語科には、将来に対する強いビジョンを持ち、支配的な時流や考え方に逆らい、あえて「マイナーな」言語や地域について真摯に学ぼうとする頼もしい学生も集まってきている。第一希望の語科ではなくとも、入学してから専攻地域の面白さに目覚める学生も多い。必要なのは、小規模語科の縮小ではなく、その可能性を拡大し、その魅力を高校生や社会に広く伝え、卒業生の活躍を支えていくことのはずだ。
 より大きな観点から考えても、今後、世界各地をカバーする小規模語科の重要性が増すことはあっても、減ることはない。今日、20世紀後半に世界秩序を形作ったアメリカのヘゲモニーが後退し、世界がますます多極化、流動化している。これに伴い、政治的にも経済的にも、世界各地ときめ細やかなネットワークを構築していくことが、今まで以上に重要になっている。そうしたなか、小規模語科を縮小・解体しては、社会的にも国家的にも大きな損失になるだろう。改革の名のもと、人事の凍結による縮小だけでなく、改組によって南アジア、中東、東南アジアなどを一つの大きな単位にまとめ、複数の語科を統廃合していく案もあるに違いない。改革が避けられないにしても、小規模語科の縮小という拙速な判断を既定路線にするのは避けるべきだ。本学の生存と社会的意義のために、全学的な討議を通じて広範な合意の形成を目指そうではないか。


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公開質問状への学長からの回答
 先月、5月25日付けで学長宛てに提出した「大学院改組および新機構設置に伴う労働条件の確保に関する公開質問状」への回答が、6月2日付で組合委員長宛てに届きましたので、こちらに転載をいたします。

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回 答 書

 2026年5月25日付けご質問事項について、下記のとおり回答します。

1.労働環境保護の方策について

 グローバル・イノベーション・デザイン・インスティテュート(GIDI)及び新専攻にかかわる教員に対しては、丁寧な意見交換を重ねながら、教育研究活動への影響や業務負担にも配慮しつつ、改革の検討・実施を進めていきます。
 また、その他の教員についても、大学院改組に伴う業務への影響に配慮しながら、必要に応じて既存業務の精査や効率化について検討を進めていきます。

2.協議の継続

 本件については、検討状況に応じて、必要な情報提供に努めるとともに、貴組合との意見交換を継続していく所存です。
以 上
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この回答を受けて、組合として引き続き、大学執行部とこの件についての意見交換を続けていく予定です。


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東京外国語大学教職員組合 第64回定期総会・懇親会のご案内

・日程:6月24日(水)18:00〜 
・場所:海外事情研究所会議室(研究講義棟4階427)
・内容:2026年度定期総会、および総会終了後に懇親会
(お弁当をご用意いたします※参加費1,000円。新規入会の方は無料)。

【総会・懇親会 出欠回答フォーム】 
 スムーズな総会運営およびお弁当手配のため、組合員全員必ずご回答をお願いいたします。


■回答締め切り: 6月19日(金)23: 59まで

 近日中に議案書の送付とそれに伴い委任状などをお願いする予定です。直前のご案内、かつ二度手間のお願いとなり、組合員の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、事情をご賢察の上、ご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。


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 組合ランチ会のお知らせ

6月24日(水) 11:45~13:00 @海外事情研究所(講義棟427)
5/27(水)に開催したランチ会には、9名の参加がありました。諸外国の婚姻制度の話や、大学院改組への懸念などを共有しました。今回は同日夕刻から総会が開かれますが、ランチ会にもぜひいらしてください。お弁当や飲み物は各自持参してください。
(毎月最終水曜日が組合ランチの日です。詳しくはMLにて。)