2026/07/24

組合ニュース-2026.7.24刊(2026年度臨時号)

 小規模語科有志から東京外国語大学の今後にご関心のある皆様へ


 6月18日の「組合ニュースレター」における小規模語科(アフリカ、オセアニア、中央アジアを含む)の意見記事は、思いがけず学外でも大きな反響を呼んだ。卒業生やその他の方々の目に留まり、SNSでの拡散もあって、小規模語科が果たしてきた役割の重要さや外語大の良さを見てくださっている方々が数多くいることが可視化された。小規模語科の担当者として、非常にありがたく感じている。
 これを受けて、6月23日、春名学長は、28言語体制を維持していくとの声明を対外的にも表明した。また翌日にも、SNS上での本学に対する誹謗中傷・差別的な発言に対して、「東京外国語大学は、世界の多様な言語と文化を深く理解し、互いの尊厳を重んじる共生社会の実現を理念としています」との声明を出した。我々、小規模語科の教員は、これらの声明を率直に賞賛したい。
 ただし、私たちの不安が完全に払拭されたわけではない。また、小規模語科の在り方についてさらに考えを深めることは、東京外国語大学の将来を考えるうえでも重要な意味を持つはずだ。

今なお残る懸念
 これまで本学ではそれぞれの小規模語科に専門分野が異なる複数の常勤教員がいることによって、その言語が話される国や地域を多面的に学べる環境づくりが続けられてきた。
 しかし、今般出された「28語科体制の維持」の声明だけでは、看板が維持されても、専門家を複数揃えた本学の特長が消滅していく可能性があるため、不安が払拭されない。「28言語科体制」の維持に「必要な人員数」が明記されていないため、将来的な人員削減の可能性が残ったままだ。
 人員を削減し、小規模言語を1人で担当する体制では教育上の分野が偏るという問題が生じる上に、担当教員への負担はあまりに大きい。実際に一人で語科を回した経験のある教員は、研究や心身の健康を犠牲にしながら業務をこなしてきた。

小規模語科における教育の使命とは
 近年AIによる翻訳機能もよく知られるようになってきたが、一つの外国語を理解するには機械的に翻訳するだけで良いのだろうか。私たちはそうは考えてはいない。ある言語を理解することは、それを話す人々を理解することだ。それには、一つの尺度、見方だけでは到底足りない。本学には、言語学、文学、思想、文化人類学、歴史学、政治学などさまざまな切り口から接近することで、学生のより深い学びを支えてきた蓄積がある。
 将来的には、近似した言語が一括りにされ、人員が削減されるのではないかという懸念もある。言語は、似ていれば同じと見なしてよいのか。私たちは、そうではないと主張する。様々な国の言葉を専攻する各語科があり、そこに複数の教員がいることで、各国の大学や政府関係機関から信頼を得て、学生の交流が促されてきた。これも、本学が積み上げてきた、そして一旦途絶えると復活させることが困難な宝である。世界に向かって開かれた窓として、本学はある。
 この大学にはどのような財産があり、これからどのようなビジョンを大切にすべきかについて、構成員全体での広範な議論を呼びかけたい。

小規模語科の実績と人材需要
 本学の受験を考えている高校生であっても、いわゆる「主要国」以外の地域に対して深い関心を抱く機会は少ないかもしれない。小規模語科は、より積極的に自らの魅力、実績、可能性を発信していくことで、この問題に対処していきたい。
 大学教育は入口ではなく、出口で評価されるべきである。一例をあげれば、外務省専門職員は本学出身者が最多数であり、外務省研修所の講師やJICA・JETRO・アジア経済研究所などにも小規模語科出身者は多い。卒業生が大使や総領事として活躍する例もあり、人材としての需要は十分にある。また、行政では外国人人口の増加に伴ってインドネシア語やビルマ語などの需要が高まっている地方自治体もあり、コミュニティ通訳の需要も広がっている。こうした現状において、本学はますます重要な役割をはたしている。

受験生へのメッセージ
 東京外国語大学をめぐって、様々なニュースや噂が飛び交っている。少子化と継続的な予算の削減によって困難な状況に置かれているのは、他の国公立大学と同様であるのは事実である。そうしたなかで、本学の改革をめぐる動向が大きな話題となっている。それは、この大学の教育と研究を本気で大切にしていて、守ろうとしている熱心な教員が多数いることの反映に他ならない。混迷の深まる困難な世界を生き抜いていく知性と逞しさを、一緒に学んで身に着けたい皆さんには、ぜひ東京外国語大学を目指して欲しい。