声明: 菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に強く抗議する
日本学術会議25期の活動が開始されるにあたって、学術会議が推薦した会員候補 105 名のうち、6 名の候補の任命を、菅首相は拒否した。
日本学術会議第七条 2 に「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とあり、第十七条には「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で 定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」とある。すなわち、学術会議会員の任命にあたっては、何よりも学術会議の推薦が尊重され、内閣総理大臣の任命は形式的なものである。
実際、1983 年 5 月 12 日の参議院文教委員会において、中曽根康弘首相(当時)は、「これは、学会やらあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております」と発言している。
菅首相による今回の任命拒否は、こうした法の規定や従来の政府見解を踏みにじる法律違反であり、とうてい容認することはできない。 また、今回の任命拒否にあたって、人文・社会科学の 6 名の研究者をその対象にしたことも重大である。そもそもその任命拒否の根拠が依然として明らかにされていない。
もしも喧伝されているように、6 名の研究者が、安倍政権時代、安全保障関連法制、特定秘密保護法、いわゆる「共謀罪」の創設を含む改正組織的犯罪処罰法等に反対意思を表明したことが、任命拒否の理由であるとすれば、日本国憲法第二十三条で保障される「学問の自由」 を侵すものに他ならない。これを許すことは、学術機関を国家の御用機関とすることを意味する。それは学問の自由と民主主義そのものの蹂躙である。
加えて、去る10月17日に実施された内閣と自民党による故中曽根康弘元首相の合同葬では、文部科学省は全国の国立大などに、弔旗の掲揚や黙とうをして弔意を表明するよう求める通知を出した。合同葬では車道を自衛隊が埋め尽くし、まさに「国葬」として執り行われた。この故中曽根首相の「国葬化」強要も、日本学術会議会員の任命拒否と軌を一にした、大学・学術機関を御用機関化しようとする政府の意志のあらわれに他ならない。
私たちは、菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に対しここに強く抗議する。そして、今回任命拒否された 6 名の研究者をただちに会員に任命するよう強く求める。
さらに、故中曽根康弘元首相合同葬における、文部科学省による、国立大学への弔旗の掲揚・黙とうなどの弔意表明の強要に断固抗議するものである。
2020年11月4日
東京外国語大学教職員組合執行委員会